2017/03/15
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目次
甲子園大会前の話題の件
全国高校野球選手権もベスト4が決まり、いよいよ大詰めを迎えようとしています。
今年の大会の直前に1つの話題となったのが、「女子マネジャーの甲子園練習参加禁止」。
出場校の女子マネージャーがユニフォームを着て甲子園練習に補助員として参加しようとしたところ、グラウンドへの立ち入りを止められたという件です。
この件を巡っては、「女子マネージャーの参加禁止はおかしいのでは?」という疑問が多く投げかけられました。
それによって、高野連は今後に検討する動きも見せています。
当ブログでもこの件に関連して以前に記事を書きました。
上記の記事は、女子部員を監督扱いにすれば甲子園練習に参加できるのではないかと思って書いたものですが、SNSで共感いただいた人もいて嬉しく思っています。
さて、Twitter上の皆さんの意見をざっと見ていた時に、次のような内容の投稿をされている方がいました。
高野連は女子部員の甲子園練習だけでなく試合出場も認めてはどうか?女子部員をグラウンドから排除するのは男女差別ではないか?
筆者は甲子園練習を男子生徒に限定にする必要はないと思っています。
それは、練習は試合にの結果に直接関係するものではないからです。
でも、大会への出場となると女子の参加を認めるとなるとどうなのかなぁと思う部分があります。
高校野球は男子高校野球?
今開催中であるリオオリンピックでもそうですが、スポーツの世界には男女別で競われる競技がたくさんあります。
また、多くの高校スポーツでもそうですよね。
そして、それらは基本的には「男子バレー」「女子バレー」「男子バスケ」「女子バスケ」「男子陸上」「女子陸上」のように、多くの場合「男子」「女子」という性別が頭に付くことが一般的です。
でも、高校野球については「男子高校野球」とは言いません。
大会名にしても、高校野球は夏の大会の場合なら「全国高等学校野球選手権大会」なので男女の冠詞が付いていません。
女子の高校野球が近年話題になっていますが、そちらは「女子の高校野球」のような形で「女子」と付けられます。
では、男女が明記されていないから、高校野球は男女混合のスポーツなのか?
そういわれたら、現時点では答えはNoであるはずです。
少なくとも、大会に関しては。
少しややこしい話なのですが、高野連の憲章には次のように書かれています。
第13条(試合・大会出場選手資格)
全日本大学野球連盟および日本高等学校野球連盟は、本憲章第2条に定める基本原理に照らして、主催する試合・大会に関する選手について、選手登録資格を定める。
引用元:日本学生野球憲章|憲章&規定|公益財団法人日本高等学校野球連盟
ちなみに、憲章の第2条には性別を男子に限定するような文言は見受けられません。
なので、憲章の上では性別は限定されていないと思われます。
では第13条にある「主催する試合・大会に関する選手について、選手登録資格を定める」についてはどうなのか。
平成28年度大会参加者資格規定には、男子生徒に限る文言が存在します。
第5条
参加選手の資格は、以下の各項に適合するものとする。
(1)その学校に在学する男子生徒で、当該都道府県高等学校野球連盟に登録されている部員のうち、学校長が身体、学業及び人物について選手として適当と認めたもの。
引用元:平成28年度大会参加者資格規定|憲章&規定|公益財団法人日本高等学校野球連盟
少なくとも平成28年度の大会においては、出場選手の資格を男子生徒に限定していますね。
つまり、平成28年度の高校野球の大会は「男子の高校野球」の大会であると言えるのです。
男女別スポーツは差別か?
では、男女別に開催されるスポーツの大会は男女差別に当たるのでしょうか?
これについては突き詰めて考えると難しいところですが、男女差別ではないと判断しても良いものだと考えます。
接触の多い競技は性差から難しい?
身体の接触が頻繁に起こり得るスポーツにおいては、なかなか男女一緒というのは難しいでしょう。
異性には触れられたくないデリケートな体の部位が存在します。
また、社会的な環境の中において、特に男性は女性を丁寧に扱うことを求められるため(ある意味それが男女差別的なのかもしれませんが)、男性に対しては強気な接触プレイができても女性に対しては消極的になる場合もあります。
男女一緒で行われることで、男女ともにパフォーマンスが低下する要因が考えられるのです。
格闘技系はもちろん、サッカーやラグビーといった相手選手(場合によっては味方も)との接触があるスポーツというのは、男女別であることに一定の合理性があるのではないでしょうか。
野球についても、サッカーやラグビーほど接触は多くありませんがこのカテゴリに属するスポーツだと考えるため、男女別で行う方がよいと思います。
接触の無い競技についてはどうか?
ちなみに、身体的な接触が無いスポーツなら男女別で問題ないのでは?
陸上競技の多くや競泳など接触プレイが無いに等しい競技もありますよね。
そちらで問題になってくるのは体力差・身体能力差です。
個人個人や種目によって異なりますが、現状、全体としては男性の方が女性よりも体格に恵まれており、身体能力的に優れている傾向にあります。
例えば、陸上競技では女子よりも男子の記録の方が上回っています。
女子の100M走のオリンピック優勝タイムでも、男子の中に混ざるとオリンピック選手の中では下位グループのタイムでしょう。
男女一緒にやってしまったら、記録的には女子選手は男子の中に埋もれてしまう。
体力・身体能力の点については、女子が男子よりも劣っていることに起因するため女性蔑視的であると言えなくもありません。
しかし、目立つのが男子ばかりになってしまうと、女子選手のモチベーションが下がってしまう可能性もあります。
男女別に競技が分かれていることで男女どちらにもスポットが当たるようになっており、それが競技全体のレベル向上につながっている面があるのではないでしょうか。
そういう意味では、男女別に競技が分かれていることは一定の合理性があると考えます。
ただ、非接触系の競技については、レベルの高い女子選手は男子の大会への参加も認めるべきという考え方もできるとは思います。
まぁ、器械体操のように競技によっては男女でルールが大きく異なるものもあるのですが。
競技人口の少なさと男女差別は別問題
なぜ高校野球に女子選手の参加を認めるべきという話が出てくるのでしょう。
一番の理由は競技人口の問題で、女子が野球をできる場が少ないことでしょう。
高校野球は注目度が高く話題になりやすいからかもしれませんが、バレーボールやバスケットボールなど男女ともに競技人口の多いスポーツでは、女子が男子部に所属して練習するという話を聞きません。
あったとしても、人数不足の部が男女一緒に練習をしているケースであって、異性の部活に選手として所属することは滅多にないのではないでしょうか(もちろん野球においても少ないケースですが)。
女子の硬式野球部は、2016年現在で全国でも二十数校しかありません。
それに対し、男子の硬式野球部は約4000校あります。
圧倒的に男子の競技人口が多い中で、野球をやりたい女子の中には、男子野球部に所属して一緒に練習に励む道を選ぶ場合があるわけですね。
でも、「競技人口が少ないから異性の大会に参加する資格を認める」というのは、ちょっと違う気がします。
3年間頑張って異性の中で練習してきたんだよ?
心情として配慮してあげたいのはわかりますが、それは「特別扱い」なのではないでしょうか。
それが理由になるのであれば、例えば、新体操をやりたい男子が女子新体操部に所属して練習に励めば、女子の大会への参加が認められるのか?という話になります。
あくまで、「競技人口の少なさを理由に異性の大会へ参加すること」についての話ですよ。
男子が女子部に参加する例では、体力差などを理由に認めないと言う人もいるかと思うので念のため。
部活動に関して男女差別となるケースは、例えば次のような場合ではないでしょうか?
野球をやりたい女子生徒がいます。
彼女は女子野球部を作ってほしくて、校長先生に直談判しに行きました。
しかし、校長先生は「野球は女子がやるものじゃないから、部を作るのは認めません」と拒否しました。
この場合は、彼女が男女差別で野球をする機会を奪われたと言えるでしょう。
では、次のケースはどうでしょうか。
野球をやりたい女子生徒がいます。
彼女は女子野球部を作ってほしくて、校長先生に直談判しに行きました。
校長先生は「野球をやるには9人必要だ。部員を9人集めれば部を作りましょう」と言いました。
※先生は9人そろえば本当に部にしてくれるつもりです。
彼女は部員集めを行いましたが、9人そろえることはできず野球部は作れませんでした。
この場合は、男女差別によって野球ができないわけではなく、「野球をしたい女子が必要人数いなかった」から野球をできないわけです。
まぁ、1人でも部にしてあげればいいじゃないかと思う人はいるでしょうけど、それはまた別問題です。
つまり、女子を理由に野球をすること自体を否定されているのなら女性差別になると思いますが、結果として女子が野球をできないのは女性差別ではないのです。
社会的に女子が野球することは認められている
社会やコミュニティ内において、女子が性別を理由に野球すること自体を認めらていないのなら女子が不当な使いを受けていると思います。
しかし、女子が野球をする環境は探せばあるわけですし、無ければ自分で作ることもできます。
もちろん、女子高生が自力でできることには限界があるでしょうから、そこは周りの大人がサポートしてあげる必要があるでしょう。
その中で、あえて異性のコミュニティ(男子野球部)に飛び込む道を選んだのであれば、受け入れなければいけないものがあると思います。
野球そのものが女子を排除しているのではありません。
あくまでも「男子野球」として行われているものに女子が参加しているから、出場資格が無いのです。
男子の大会に女子の参加を認めないこと自体は、運営上のレギュレーションであって、それ自体が差別であるとは思いません。
「参加資格16歳以上」「高校生限定」といった制限と同じ類のものだと思っています(それを年齢差別というなら差別になっちゃいますが)。
高野連、女子野球に協力してあげて!
とはいえ、高野連の方針に疑問が無いわけではありません。
それは女子部員の存在を認め、部員登録させているからです。
女子マネージャーや女子選手は、高野連が発表する野球部員数にもカウントされている、れっきとした部員です。
おそらく、女子部員も高野連が認めたきっかけは「女子マネージャーになりたいという女子生徒がいた」ことだと思います。
しかし、部員を近くで応援・サポートする存在として女子部員を位置付けていたのに、予想外にもマネージャー業ではなく選手として練習に参加する女子生徒も現れた。
高野連からすれば温情的に女子選手の練習参加を認めているのかもしれませんが、男子と一緒に3年間頑張って練習してきた女子選手がいたら、試合に出してあげたいと思うのは当然ですよね。
極論かもしれませんが、あくまでも男子高校野球という位置づけで管轄・運営しているのであれば、最初から選手としての女子部員を高野連は認めるべきではなかったのかもしれません。
※女子マネージャーを含めていないのは、彼女たち自身は試合に参加することを望んでおらず、マネージャー業に憧れて参加していると考えたからです。
甲子園練習の女子部員参加禁止の件についても、「男子の野球大会として開催しているから、参加を男子に限定しているんだ」とだけ毅然と言い切ってしまった方が、まだスッキリしたでしょう。
「女子はケガの危険がある」とか男子にも当てはまる理由で女子を排除するような意味合いの事を言うから、余計ドツボにハマった気がします。
女子選手が試合に出られないことのそもそもの問題は、高野連が女子選手に門戸を開放していないことではありません。
「女子野球そのものが発展途上であること」なんです。
男子の野球ほど大きな団体ではないですが、女子野球の連盟も存在します。
その点においては、あくまでも(現時点では)男子の高校野球を管轄する高野連が、女子選手の扱いについて頭を悩ますのは、ちょっと筋が違う気も正直しています。
ただ、そこは高野連自身の身から出た錆という面もあります。
すでに女子選手を部員として抱えてしまっているからには、何かしら動いた方が良いでしょう。
あ、そうだ。
高野連に登録されてる全国の女子選手を集めて試合をさせてあげたらどうでしょうか。
寄せ集めの即席チームになっても、いい思い出にはなりませんか。
その効果で女子部員が増えていったら、女子野球部発足の方向に進み、女子野球自体が盛り上がることになっていくと思うんですけどねぇ。
高野連は女子野球を支援すべき立場ではないのかもしれません。
しかしながら、あくまでも今の高校野球を男子高校野球として続けていきたいのであれば、女子部員の環境改善に繋がる働きかけをしていった方が良いのではないでしょうか。